グノーシス主義でない「キリスト教」において救済は、イエスの死による罪の贖いに基づいていますから、イエスの死は最重要テーマであり、イエスが死んだとされるところに教会を建てるというのはいたって自然なことと思われますが、聖墳墓教会がゴルゴタの丘(と、その園に掘られたイエスの墓)にあると早合点するのは考えものです。とはいえ、イエスがエルサレムのどこかで死を遂げたと思われますから、それを記念した教会をエルサレムのどこかに建てるのはありえることだと思います。
この聖墳墓教会の興味深いところは、コプト正教会、シリア正教会、ギリシャ正教会、アルメニア正教会、カトリックが合同で使用・運営している教会だという点です。さらに、教会のドアとその鍵の管理・保管は12世紀以来イスラム教徒のヌセイベ家が行っており、この点もまた非常にユニークです。こうした事柄は非常に象徴的なことのように感じられます。日本にいては感じにくいですが、エルサレムではイスラム教が優勢であり、また東方教会も存在感があります。
さて、この教会の御神体、御本尊のひとつは、この石です。「塗油の石」と呼ばれています。この石の上にイエスの遺体を横たえ、香油を塗った(塗ってない?)からです。
そのことを否定する根拠も肯定する証拠もありません。わたしはそんなオカルト信じませんが、それとは真逆に一点の疑いもなく信じる人がいるのもまた現実です。
上から写しました。
この石に口づけしたり、なでたりする信者はたくさんいます。わたしの観点からそれは偶像崇拝で間違いないのですが、だからといって、そうする人々を否定する気にはなりません。純粋な信仰心に基づいてそうしているに違いないからです。
この教会はゴルゴタの丘に建てられているということですが、同時にイエスの遺体を安置した「まだ誰も葬られたことのない新しい墓」もあることになっています。ゴルゴタにある園にその墓はあったからです。つまりは、上の絵のとおりです。
その「新しい墓」は、上の天井画真下の聖堂/Aediculeの中にあります。
その石墓のために並んでいる人々です。非常に大勢です。1時間並んでも番は回ってきません。
皆が並んでいるのでわたしも並んでみることにしました。
エディクラ(聖堂)に入りました。
イエスを一旦埋葬した墓はさらにここをくぐった先にあります。
イエスの墓(?)にニアミスです。
注目すべきなのはイコンや燭台ではなく、その下に見える大理石です。その下に、アリマタヤのヨセフの墓になるはずだった、イエスの墓があることになっています。
本当にイエスが置かれた墓なのかどうかは分かりません(否定することも肯定することもできません)が、石灰岩を掘って造られた墓であることは間違いないようです。
その調査は2016年10月26日の夜から28日の夜にわたって行われました。その様子と詳細についてはナショナルグラフィックのレポートをご覧ください。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/110200415/
この箇所が祭壇によって特に祀られているのは、ゴルゴタの丘の上だからです。
教会はゴルゴタの丘に建っているはずなのですが、まったくそんな感じがしません。教会の床で隠れてしまっているのです。
「下はゴルゴタの丘だ」ということが分かるように配慮されています。
上の2枚の写真が、ゴルゴタの丘の石灰岩部分だとのことです。
この教会はかなり広い教会です。色々あります。
聖墳墓教会地下にあるヘレナ聖堂です。ヘレナとはコンスタンティヌス1世の母です。イスラエルを訪れ、各地でキリスト教の聖地を比定していった人物、聖地巡礼の元祖です。
ヘレナ聖堂前のモザイクです。
モザイクに罪はありません。